第1章 転入生 白井狼薇という少女
実技終了。
二人は、ほぼ無言で戻ってきた。
相澤が腕を組む。
「結果は悪くない。連携も成立していた」
視線が、二人を行き来する。
「――だが」
少しだけ間を置いてから言う。
「爆豪。前に出すぎだ。肩に力も入ってる。余計なこと考えてないで集中しろ。」
「チッ……」
「白井。お前は逆に引きすぎだ。爆豪を完全に信用しきれとは言わないが、実際の現場では即席のチームアップだってある。背中を任せるとお前が信用にない限り、少なからず隙が生まれる。それで誰かが命を落としたら、お前はどうするんだ。」
白井は、静かに頷いた。
「……はい」
「お前ら、同じ前を向け」
相澤はそう言って、背を向ける。
「それができたら、もっと強くなる」
残された二人。
爆豪が、ふいに言った。
「……邪魔じゃなかった」
白井は、一瞬だけ驚いたように彼を見る。
「……ありがとうございます。あなたも。」
それだけ。
それ以上、言葉は続かない。
でも。
白井は、確かに感じていた。
――正面から、組まされた。
――逃げ場はなかった。
爆豪勝己は、気づいていない。
この実技が、
「気に食わない距離」を
「無視できない距離」へ変えたことを。