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オオカミ少女は愛の夢を見る

第1章 転入生 白井狼薇という少女


開始の合図。

瓦礫の間を進みながら、
爆豪は一切、振り返らない。

「遅ぇぞ」

背中越しに投げられる声。

「……距離を保っています」

「いらねぇ」

爆豪は即答する。

「前に出ろ。
俺が切り開く」

命令口調。
でも、迷いはない。

白井は一瞬、判断に迷った。

――前に出れば、
――制御の負荷が上がる。

けれど。

「……分かりました」

そう答えて、一歩踏み出す。

爆豪の背中は、迷わない。
爆発音と共に道を作る。

白井は、その隙を縫うように動いた。
前に出すぎない。でも、遅れない。

爆豪が破壊し、白井が制圧する。

言葉は少ない。
だが、噛み合っている。

「……」

爆豪が、ほんの一瞬だけ視線を走らせる。

――遅くねぇ。
――邪魔でもねぇ。

それが、予想外だった。

「来るぞ!」

爆豪の声に反応し、
白井は即座に位置を変える。

視界の端で、
彼女の動きが、正確すぎるほど正確だと気づく。

無駄がない。
感情もない。

――危なっかしいくせに。

爆豪は歯を食いしばる。

敵役を制圧し、
エリアの奥へ。

「お前さ」

爆豪が、歩きながら言う。

「なんでそこまで、線引く」

狼薇は、足を止めなかった。

「……任務中です」

「だから聞いてんだよ」

苛立ちを含んだ声。

「組んでんのに、信用されてねぇ感じがする」

その言葉に、
白井は初めて、ほんの少しだけ表情を揺らした。

「信用していないわけではありません」

「じゃあ何だ」

「……癖です」

短い答え。

爆豪が、舌打ちする。

「厄介な癖だな」

「……よく言われます」

一瞬だけ、空気が緩んだ。

ほんの一瞬。
それだけで、十分だった。

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