第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
それは、
爆豪にとっても、
白井にとっても——
予想外の変化だった。
夕方の寮。
白井は、自分の部屋の前で立ち止まり、
少しだけ考えてから踵を返した。
向かう先は、
もう迷わない。
爆豪の部屋。
「……勝己」
ノックは一度。
「……入れ」
短い返事。
ドアを開けた瞬間、
白井は自然に笑っていた。
「……おかえり」
爆豪は、
その言葉に一瞬だけ手を止める。
「……ここ、お前の部屋じゃねぇぞ」
「……うん」
白井は、
迷いなく答えた。
「……でも、
来たくなった」
その言葉だけで、
爆豪の胸に嫌な音が鳴る。
——また、
——無自覚でやってる。
「……何だよ、それ」
そう言いながらも、
拒まない。
白井は、
爆豪の隣に座った。
距離は、
ぴったり。
「……今日ね」
「……授業、ちょっと疲れた」
爆豪が、
横目で見る。
「……珍しいな」
「……だから」
白井は、
ゆっくりと体を傾けて——
爆豪の肩に、
そっと頭を乗せた。
「……こうしてたい」
一瞬、
部屋の空気が止まる。
「……白井」
「……ん?」
「……それ」
「……反則だぞ」
白井は、
少しだけ目を瞬かせてから、
小さく笑った。
「……恋人だから?」
「……そういう問題じゃねぇ」
でも。
肩を引くことは、
しなかった。
——むしろ。
爆豪は、
白井の頭に顎を乗せる。