第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
課題が一段落した頃。
白井は、
ふと爆豪の手元を見る。
ペンを持つ指。
無骨で、
力強い。
——この手に、
——何度も守られてきた。
「……勝己」
「……何だ」
白井は、
そっとその手に触れた。
絡めるわけでも、
握るわけでもない。
ただ、
指先を重ねる。
「……今日も、ありがとう」
爆豪は、
動かない。
でも、
その手を引かない。
「……何が」
「……一緒にいてくれて」
その言葉に、
爆豪の眉が少し下がる。
「……当たり前だろ」
低く、
でも柔らかい声。
「……俺の恋人なんだから」
その言葉に、
白井の胸が跳ねる。
「……好き」
いつものように。
でも、
今日は少し近くで。
「……何回言う気だ」
「……何回でも」
白井は、
にこっと笑った。
「……言わないと、溢れるから」
「……」
爆豪は、
白井の腰に手を回した。
強くない。
でも、逃がさない。
「……なあ」
低い声。
「……それ以上甘えたら」
一拍。
「……俺ぁ、止まれなくなるぞ」
白井は、
少しだけ驚いてから——
安心したように笑った。
「……止まらなくても、……ちゃんと、
勝己は止めてくれるでしょ。私が嫌がることは絶対にしない。」
完全に、
信頼しきった声。
爆豪は、
その言葉にやられた。
「……クソ」
額を、
白井の額に軽く当てる。
「……そういうとこだ」
「……でも」
小さく息を吐く。
「……嫌いじゃねぇ」
白井は、
そのまま爆豪の胸に寄り添った。
——守られてる。
——でも、閉じ込められてない。
——甘くて、
——安心で、
——逃げ場がない。
それが、
今の恋だった。
夜は、
まだ続く。
でも。
この“何でもない時間”こそが、
二人を一番深く結びつけていた。