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オオカミ少女は愛の夢を見る

第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで


「……狼薇、、。」

呼ぶつもりはなかった。

ただ、
名前が自然と零れただけ。

白井は、
目を覚まさない。

そのことが、
なぜだか胸にくる。

——守りたいとか、
——独占したいとか。

——そんな言葉じゃ足りない。

——これは。

——“一緒に生きてる”って感覚だ。

窓の外から、
朝の気配が少しずつ強くなる。

今日も、
何でもない一日が始まる。

訓練があって。
授業があって。
クラスメイトがいて。

——でも。

この朝があるだけで、
全部が違って見える。

「……起きたら、メシ食わせねぇとな」
ぼそりと呟く。

「……寝不足だろ。こいつ。」

自分のことは、
完全に後回し。

でも、それが
苦じゃない。

白井が、
少しだけ眉を動かした。

「……ん……」

「……」

爆豪は、息を殺す。

白井の目が、
ゆっくり開く。

「……おはよう……」

まだ眠そうな声。

爆豪は、
一瞬だけ言葉に詰まってから——

「……おう」

短く返す。

白井は、
状況を思い出したのか、
少し照れたように笑った。

「……一緒に、寝ちゃったね」

「……悪いか」

「……ううん」

白井は、
そのまま爆豪の胸に頬を寄せる。

「……嬉しい」

その一言で、
胸がいっぱいになる。

「……俺もだ」

気づいたら、
素直に言っていた。

白井が、
少し驚いたように目を丸くする。

「……今の、聞き間違い?」

「……聞き間違いじゃねぇ」

顔を逸らしながら。

「……何でもない朝だけど。
 ……こういうの、悪くねぇ」

白井は、
くすっと笑った。

「……うん」

「……私も」

二人は、
そのまましばらく動かなかった。

急ぐ理由なんて、
どこにもない。

ただ、
同じ朝を迎えられたことが、
何よりの幸せだった。

——何でもない朝。

でも。

——これから先、
——ずっと大事にしたい朝。

そんな節目の一日が、
静かに始まっていた。
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