第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
夜の寮。
爆豪の部屋は、
いつもより静かだった。
机の上には開きっぱなしのノート。
ベッドの端に腰掛けた爆豪は、
珍しく、何もしていなかった。
「……勝己」
背後から、
柔らかい声。
「……何だ」
振り返ると、
白井が立っていた。
「……今日、ずっと一緒にいたでしょ。
……人多かったし。……疲れてない?」
その言葉に、
爆豪は一瞬だけ黙る。
「……別に」
いつもの癖。
でも。
白井は、
そのまま一歩近づいた。
「……座って」
「……は?」
「……いいから」
珍しく、
少しだけ強い言い方。
爆豪は、
文句を言いかけて——
結局、従った。
「……何する気だ」
「……甘やかす」
即答。
「……は?」
耳を疑う。
白井は、
爆豪の前にしゃがみ込んだ。
目線が、
自然と合う。
「……最近、ずっと前に立ってくれてた。
……視線も、噂も。……全部、
一人で受け止めてくれてたでしょ」
爆豪の喉が、
小さく鳴る。
「……勝手にやってただけだ」
「……うん」
白井は、
にこっと笑う。
「……だから、今日は私の番」
そっと、
爆豪の手を取る。
強くもなく、
でも逃がさない。
「……何だよ」
「……力、抜いて」
「……俺は、そんな——」
「……いいの」
白井は、
爆豪の手を胸元に引き寄せた。
「……ここにいる時くらい。
……強くなくていい」
その瞬間。
爆豪の肩から、
ふっと力が抜けた。
「……ズルいこと言うな」
小さな声。
「……効く」
白井は、
驚いたように目を見開いてから、
ゆっくり微笑んだ。