第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
「……勝己」
白井が、
少しだけ困った声で呼ぶ。
「……やりすぎよ。」
爆豪は、
舌打ちして言った。
「……足りねぇくらいだ」
「……もう。勝己ったら。」
白井が驚くと、
爆豪は白井の手首を掴む。
強くない。
でも、確実に。
「……公認だろ。
……だったら、隠す必要ねぇ」
そのまま、
白井を自分の横に引き寄せる。
距離は、
ゼロ。
周囲の視線?
関係ない。
「……こいつは」
低く、
はっきり。
「……俺のだ」
「……ちょっ、勝己……!」
白井の顔が、
一気に赤くなる。
でも。
振りほどかない。
——守られてる。
——それが、
はっきり分かる。
その様子を、
少し離れたところから
轟が見ていた。
「……随分、分かりやすい独占欲だな。」
隣のクラスメイトが苦笑する。
「爆豪、隠す気ゼロだよな〜」
切島が苦笑いをする。
轟は、
静かに言った。
「……あれで、本人なりに必死なんだろう。
白井を、守りたいんだ。」
白井は、
爆豪の袖をそっと引いた。
「……勝己」
「……何だ」
「……ありがとう」
「……でも」
少しだけ、
小声で。
「……私、逃げないよ?」
爆豪は、
一瞬だけ動きを止めた。
「……分かってる」
低く答える。
「……だからこそ
……俺が、前に出る。
……後ろは、お前に任せる。」
その言葉に、
白井の胸が熱くなる。
——独占されている。
——でも、
——閉じ込められてはいない。
それが、
何より嬉しかった。
その日から。
白井が声をかけられれば、
爆豪は自然に隣に立つ。
爆豪が睨めば、
周囲は察する。
そして、
二人はもう否定しない。
学校中が知っている。
——2年A組の爆豪勝己は、
——白井狼薇の恋人だと。
そして、
白井は、
その“独占”を、
嫌だとは、
一度も思わなかった。