第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
それは、
意識してやっているわけじゃなかった。
でも、
確実に変わっていた。
廊下。
白井がロッカーからノートを取り出そうとした、その時。
「……それ、次の授業で使うだろ」
背後から聞こえる声。
爆豪勝己。
振り返るより先に、
ノートが手元に差し出される。
「……ありがとう」
受け取ろうとして、
指先が触れた。
一瞬。
ほんの一瞬なのに。
「……っ」
白井の肩が、
小さく跳ねる。
「……何ビビってんだ」
低い声。
でも、
責める感じじゃない。
「……びっくりしただけ」
「……ふーん」
爆豪は、
そのまま距離を取らない。
——近い。
昨日より、
確実に近い。
「……勝己」
「……なんだ」
「……近くない?」
そう言うと、
爆豪は眉をひそめた。
「……恋人だろ」
即答。
「……離れる理由があるか?」
白井の胸が、
きゅっと鳴る。
——言葉が、
——直球すぎる。
「……ない、けど」
小さな声。
「……ならいい」
そう言って、
自然に並んで歩き出す。
歩幅を合わせる。
肘が、時々触れる。
——わざとじゃない。
——でも、
——避けてもいない。
昼休み。
ベンチに並んで座る二人。
「……飲むか」
爆豪が差し出したのは、
自分が飲んでいたペットボトル。
「……え」
「……今さら何言ってんだ」
キャップを締め直して、
渡してくる。
白井は、
少し迷ってから受け取った。
「……ありがとう」
一口飲んで、
返そうとした時。
「……そのまま持ってろ」
「……え?」
「……重いから」
意味不明。