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オオカミ少女は愛の夢を見る

第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで


「……勝己」

「……なんだ」

「……昨日のこと」

言いかけて、
言葉に詰まる。

「……」

爆豪は、
一瞬だけ立ち止まり。

「……忘れてねぇ」

短く言った。

「……俺も」

それだけで、
十分だった。

白井の胸が、
ふっと軽くなる。

「……うん」

食堂に入る直前。

爆豪が、
低い声で付け加える。

「……気まずくなる必要、
ねぇだろ」

「……恋人なんだから」

その言葉に、
白井の顔が一気に熱くなる。

「……っ」

返事が、
できない。

でも。

「……うん」

小さく、
でも確かに頷いた。

席に着いても、
視線が合うたびに照れる。

指先が触れそうになるたびに、
心臓が跳ねる。

——キスをしただけ。

——なのに、
——世界が、少し変わった。

でも。

それは、
ちゃんと“いい変化”だった。

白井は、
湯気の立つカップを両手で包みながら思う。

——これが、
——恋人の朝。

隣を見ると、
爆豪は何食わぬ顔で食べている。

でも、
視線は時々、こちらに来る。

目が合うと、
ほんの一瞬だけ、柔らかくなる。

——ああ。

——ちゃんと、
——昨日の続きなんだ。

気まずくて、
照れていて、
でも、確かに近い。

そんな朝が、
静かに始まっていた。
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