第1章 転入生 白井狼薇という少女
翌日。
朝の教室は、いつもより少しだけ騒がしかった。
白井狼薇は、自分の席に着きながら、その違和感を感じ取っていた。
――視線が、増えた。
嫌なものではない。
好奇心とも、警戒とも違う。
ただ、
**“意識されている”**という感覚。
「おはよ、白井ちゃん」
麗日お茶子が、昨日より少しだけ自然に声をかけてくる。
「……おはようございます」
相変わらず敬語。
でも、声の硬さは少しだけ和らいでいた。
「今日の実技、チーム同じだったらいいね」
何気ない言葉。
期待も、押しつけもない。
「……そうですね」
短く返すと、お茶子はそれで満足そうに笑って自分の席へ戻る。
――変わっていないはずなのに。
白井は、机にバッグを置きながら思う。
昨日と、何が違う?
チャイムが鳴り、
席に着いたまま、前を見る。
その視界の端に、
金色の髪が入る。
爆豪勝己。
こちらを見ているわけじゃない。
でも、見られていない気がしない。
昨日、廊下で言われた言葉が、ふと蘇る。
選び方が下手だ。
意味は、まだ分からない。
でも、不思議と心に残っている。
「……」
視線を落とすと、
隣の席の人物が、いつものようにノートを開いていた。