第7章 告げる、覚悟
病院の廊下。
消毒の匂い。
白い壁。
足音が、
やけに大きく響く。
「……狼薇」
名前を呼ぶ声が、
震える。
処置室の前で、
足が止まった。
——もし。
——もし、
——“軽傷”じゃなかったら。
扉が、
静かに開く。
ベッドに腰掛けていたのは、
白井狼薇。
腕に包帯。
少し疲れた顔。
でも——
生きてる。
「……勝己?」
その声を聞いた瞬間。
爆豪の中で、
張り詰めていたものが、
一気に切れた。
「……っ」
息が、
うまく吸えない。
視界が、
滲む。
「……大丈夫だよ」
白井が、
慌てて言う。
「本当に、
大した怪我じゃ——」
「……黙れ」
低い声。
でも、
怒っていない。
「……ふざけんな……」
肩が、
わずかに揺れる。
「……軽傷とか、
関係ねぇだろ……」
拳を握りしめたまま、
俯く。
ぽとり、と。
床に落ちたのは、
涙だった。
「……っ」
白井の胸が、
強く締めつけられる。
——この人は。
——私が“無事だった”
——それだけで。
こんなにも、
感情を溢れさせる。
「……勝己」
静かに、
名前を呼ぶ。
爆豪は、
慌てて顔を拭う。
「……見るな」
「今のは、見んな」
いつもの強がり。
でも。
「……見てたいの。」
白井は、
そう言った。
「……大切に、
想われてるって分かった」
爆豪が、
顔を上げる。
目が合う。
「……私」
ゆっくり、
言葉を選ぶ。
「……その気持ちを、
受け取る覚悟ができた」
「逃げない」
「……ちゃんと、
向き合う」
爆豪の瞳が、
大きく揺れる。
「……今は」
白井が、
小さく微笑む。
「怪我人だから」
「でも」
「……勝己の気持ち、
受け止める準備はできてる」
その一言で。
爆豪は、
深く息を吐いた。
「……分かった」
短く、
でも確かに。
「……治ったら」
「全部、
言う」
——告白は、
まだ。
でも。
——逃げない約束は、
もう交わされた。
病室には、
静かな安堵が落ちていた。
守りたいと思った人。
守られていると気づいた人。
二人はもう、
同じ場所を見ていた。