第7章 告げる、覚悟
少しして、
校舎の外。
寮へ戻る途中で、
声をかけられた。
「ねえ、
ヒーロー科?」
振り向くと、
見知らぬ普通科の男子生徒。
「……なに?」
「仮免取ったんでしょ?すごいね」
頭からつま先まで視線がわかりやすい。
それに、距離が、近い。
「……ありがとう」
一歩、下がろうとした。
その瞬間。
腕に、触れられる。
「ちょっと話——」
「……やめて」
声が、低くなる。
胸の奥が、
一気に冷える。
——嫌だ。
——触れられたくない。
心臓が、
早くなる。
「……っ」
反射的に、
腕を振りほどいた。
「……触らないで」
はっきり言うと、
相手は慌てて手を引いた。
「ご、ごめん……」
そのまま、
距離を取って去っていく。
残された白井は、
その場で立ち尽くした。
——同じ“触れる”なのに。
さっきとは、
まるで違う。
手首に残る感覚が、
不快で、重い。
さっきの温度は、
もう、ない。
「……どうして」
小さく、呟く。
爆豪の時は、
怖くなかった。
むしろ。
——安心した。
——守られている、
——と感じた。
触れ方の問題じゃない。
距離の問題でもない。
「……」
胸に、答えが浮かぶ。
——誰に、触れられたか。
それだけだった。
爆豪の手は、
自分を“自分として”扱っていた。
奪うためじゃない。
確かめるためでもない。
——守るため。
「……」
ゆっくり、息を吐く。
——違うんだ。
——勝己は。
ただの接触で、
ここまで心が動く理由。
もう、
分からないふりはできなかった。
白井は、
胸に残る熱を抱えたまま、
寮への道を歩き出す。
——触れられて、
——嫌じゃなかった人。
その事実が、
静かに、でも確実に、
恋の輪郭を描き始めていた。