第7章 告げる、覚悟
放課後の廊下。
人の少ない時間帯で、空気が少し緩んでいた。
白井は、掲示板の前で足を止め、
次の予定を確認していた。
「……」
背後から、足音。
「……狼薇」
低い声に、振り向く。
爆豪が、
少しだけ距離を空けて立っていた。
「……何?」
「先生に、提出物の話」
「あ、うん」
短いやり取り。
それだけのはずだった。
——なのに。
人の流れが、急に増える。
通り過ぎる生徒の肩がぶつかり、
思わず白井が体勢を崩した、その瞬間。
手首を、掴まれる。
「……っ」
反射的に息を呑む。
爆豪の手だった。
強くない。
でも、迷いのない動き。
「……危ねぇ」
それだけ言って、
すぐに手を離す。
ほんの一瞬。
数秒にも満たない接触。
なのに。
——胸が、跳ねた。
手首に残る、体温。
近づいた距離で感じる、
微かに焦げたような匂い。
爆豪特有の、
ニトロの甘い匂い。
「……」
何も言えなくなる。
「……大丈夫か」
「……うん」
声が、少しだけ遅れる。
爆豪は、
それ以上踏み込まず、
いつも通りの距離に戻った。
「……じゃ」
短く言って、
歩き出す。
白井は、
その背中を見送った。
——たったそれだけ。
なのに。
胸の奥が、
じんわり熱い。