第6章 揺れる日常、進む背中
助けている市民を守るか。
別の被害を防ぐか。
白井は、
一瞬だけ目を閉じ——
「心操、ここはあなたに任せる。私は、
被害拡大を止める」
迷いはなかった。
——一人で抱えない。
爆豪の言葉が、
脳裏をよぎる。
心操は、
即座に頷いた。
「了解」
白井は走る。
個性を使ってできる限り早く。
でも、踏み込みすぎない。
倒壊を防ぎ、
人を守り、
引き際を誤らない。
——できている。
⸻
その頃。
雄英高校。
いつも通りの授業中。
だが、A組の空気は少し違った。
「……そろそろ、実技だよな」
切島が、ぽつりと言う。
「うん……」
麗日が手を握る。
「こっちまで緊張するわぁ〜」
誰も口には出さないが、
全員が思っている。
——白井と心操。
どうか、やりきれ。
教室の後方。
爆豪は、
腕を組んだまま、前を見ていた。
ノートは開いている。
授業は、聞いている。
でも。
拳は、
固く握られている。
——判断しろ。
——焦るな。
——戻ってこい。
言葉にしない祈り。
⸻
実技会場。
最後の救助が終わり、
終了の合図が鳴る。
「……終わった」
白井は、その場に膝をついた。
息が、荒い。
心操が、
少し遅れて合流する。
「……やったな」
「……うん」
二人は、
何も言わずにハイタッチをした。
結果は、
まだ分からない。
でも。
——やれることは、
全部やった。
それだけは、
胸を張れた。
白井は、空を見上げる。
——勝己。
——待ってて。
仮免試験は、
クライマックスを越えた。
残るのは、
結果だけ。