第6章 揺れる日常、進む背中
仮免試験会場。
広大な施設の一角で、白井はペンを置いた。
——終わった。
筆記試験。
最後の問題まで、迷いはなかった。
「……」
深く息を吐く。
隣の席で、心操が、
静かに立ち上がった。
「……どうだった」
小声で聞く。
「……大丈夫」
白井は頷いた。
「落ち着いて書けた」
「それなら、もう半分は越えたな」
心操の声も、
どこか落ち着いている。
だが。
——本番は、ここから。
⸻
実技会場。
モニター越しに説明が流れる。
「これより、
仮免試験・実技を開始する」
「想定は、
同時多発災害下での救助・判断」
瓦礫。
逃げ惑うダミー市民。
複数の危険区域。
実践を想定した“ヒーローとしての総合力”が問われる形式。
「それではみなさん、頑張ってください。
その言葉に、
白井の背筋が自然と伸びた。
——大丈夫。
——ここまで充分やってきた。
⸻
「……行くぞ」
心操が言う。
「……うん」
スタートのブザーが鳴り響く。
二人は、
別ルートから同じエリアへ進入する。
「白井、
右側、崩落の可能性高い」
「了解。
私は左を先に確認する」
声をかけ合いながら、
冷静に動く。
瓦礫の下敷きになったダミー。
恐怖で動けない設定。
「……大丈夫」
白井は、
しゃがんで目線を合わせる。
「今、
助けるから」
腕の一部を獣化。
最小限の力で、
瓦礫を持ち上げる。
——制御、できてる。
心操が、
声で誘導する。
「……足元に気をつけながら、こちらへ。安全区域まで案内します。」
二人の連携は、
訓練通りだった。
だが。
別エリアから、
警告音。
——二次災害。
「……!」
一瞬、判断が迫られる。