第6章 揺れる日常、進む背中
「訓練でやったこと、全部見てた」
「判断も、
引き際も、
もう身についてる」
一拍。
「それでもミスる時は、ぜってぇにある」
言葉は、
厳しい。
「でも」
視線が、真っ直ぐになる。
「お前は、立て直せる」
「それが、仮免で見るもんだ」
白井の胸が、
静かに熱を帯びる。
——期待されてる。
——信じられてる。
「……勝己」
「んだよ。」
「……ありがとう」
爆豪は、
目を逸らして言う。
「礼は、
受かってからだ」
そして、
踵を返す前に一言。
「……明日」
「前に出ろ」
「俺は、戻ってくる場所で待ってる」
——待つ。
でも、
離れない。
その言葉に、
不安が一つ、
溶けていく。
「……うん」
しっかり、頷いた。
ドアが閉まる。
部屋に戻った静けさは、
さっきよりも軽かった。
白井は、ノートを閉じる。
——もう、大丈夫。
——やれる。
胸の奥に、
確かな芯ができていた。
⸻
翌朝。
試験会場へ向かうバスの中。
シートに座る白井は、
窓の外を見ながら、
静かに息を整える。
——不安は、ある。
——でも、
——一人じゃない。
視線を上げると、
前方で心操が振り返った。
一瞬、目が合う。
言葉は、ない。
でも。
小さく、
拳を握る仕草。
——行け。
そう、言われた気がした。
白井は、前を向く。
仮免試験本番が、
いよいよ始まる。