第6章 揺れる日常、進む背中
仮免試験の前日。
雄英の寮は、いつもより静かだった。
白井は、自室の机に向かい、
何度目か分からないノートをめくっていた。
——判断基準。
——優先順位。
——制御。
頭では、理解している。
でも。
「……」
ペン先が、止まる。
——本番で、
——同じようにできる?
胸の奥に、
小さな不安が積もっていく。
失敗したら。
判断を誤ったら。
制御が、崩れたら。
「……」
窓の外を見て、
深く息を吐いた。
その時。誰かが部屋の扉を叩いて、扉の向こうから
「……まだ起きてんのか」
と、低い声が聞こえた。
「……勝己」
扉を開けて彼と相対する。
「顔、考えすぎのやつだ」
図星だった。
「……少しだけ」
そう答えると、
爆豪は部屋に入ってくる。
椅子には座らない。
距離は、詰めすぎない。
「……不安か」
「……うん」
正直に答えた。
「失敗したらって、考えちゃう」
爆豪は、
一瞬だけ目を伏せ——
「当たり前だ」
そう言った。
「不安がねぇやつは、準備もしねぇ」
白井は、
少し驚いて顔を上げる。
「……でもな」
一歩、近づく。
「お前は、
できる」
力強く、そして静かに断言した。