第6章 揺れる日常、進む背中
訓練後。
白井は、水を飲みながら一息ついていた。
「……お疲れ」
聞き慣れた声。
振り向くと、
爆豪が立っている。
「……ありがとう」
「今日の動き、かなり良かった」
ぶっきらぼうだけど、
はっきりした評価。
「……ほんと?」
「ああ」
即答。
「仮免、問題ねぇと思う。」
その言葉に、白井の胸が少し軽くなる。
「……ありがとう」
爆豪は、
そのまま少し間を置いてから言った。
「……無理、すんなよ」
「ちゃんと、戻ってこい」
“ここに”。
その意味を、
白井はもう分かっている。
「……うん」
⸻
その直後。
「白井、さっきの場面だけど——」
心操が、
改善点を伝えに来る。
爆豪の視線が、
自然と二人に向く。
近い距離。
真剣な表情。
「……」
爆豪は、
一歩引いた。
割り込まない。
邪魔もしない。
——待つ。
そう、決めたから。
でも。
「……なあ、狼薇。」
その聞き慣れた低い声に、白井が振り向く。
「終わったら、俺のとこ来い」
「話がある」
それだけ。
心操は、一瞬だけ爆豪を見る。
何も言わない。
でも、察したように頷いた。
「……後で、ね。」
白井が答える。
爆豪は、
それ以上言わずに背を向けた。
——独占は、やめない。
——でも、奪わない。
今は。
⸻
夕方。
白井が爆豪のもとへ向かうと、
彼は壁にもたれて待っていた。
「……待たせた?」
「別に」
視線を逸らしたまま。
「今日の訓練」
「ちゃんと、
前に進んでた」
「……それだけ言いたかった」
言い切る。
「……応援してる」
照れも、
誤魔化しもない。
ただの本音。
白井は、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「……勝己」
「なに」
「……待ってくれてるの、分かる。」
爆豪は、
一瞬だけ目を見開き——
「……ああ」
短く答えた。
「待つ」
「でも」
「お前が頑張ってる間、俺も目は離さねぇ」
宣言だった。
白井は、小さく笑った。
——この人なら、きっと待たせても、大丈夫。
そう思えてしまう自分に、
もう戸惑いはなかった。
仮免試験は、もうすぐだ。
そして、その先に待つものも。