第6章 揺れる日常、進む背中
でも。
「……可愛い」
即答。
直球。間髪入れずに。
食堂の空気が、
一瞬で止まった。
「……え?」
白井だけじゃない。
「……は?」
「……ちょっと待って?」
周囲のクラスメイトも、
一斉に固まる。
白井の顔が、
さらに赤くなる。
「……か、勝己……!」
声が小さく震える。
爆豪は、視線を逸らさない。
「事実だろーが。恥ずかしがって、顔隠して。
俺と目があうと赤くなって、
可愛くねぇわけねぇだろ。」
淡々と、
当然のように言う。
「……っ」
白井は、
今度こそ両手で胸元を押さえた。
——心臓が、
——もたない。
「ちょ、ちょっと爆豪!」
芦戸が叫ぶ。
「朝から直球すぎでしょっ!!」
「いや……」
上鳴電気も顔を赤くしている。
「俺まで照れてきたんだけど……」
「……これは」
八百万が扇子のように手を口元に当てる。
「見ているこちらが、恥ずかしくなりますわ……」
「……あいつ、無自覚に爆弾落としてくな〜。」
切島が苦笑する。
食堂のあちこちで、赤面の連鎖。
中心にいる白井は、
完全に固まっていた。
「……嫌か」
爆豪が、
少しだけ声を落として聞く。
白井は、
ゆっくり首を振る。
「……嫌じゃ、ないの。それが、、」
小さく、
でも確かに。
その答えに、爆豪の口元がわずかに緩む。
「……なら、いい」
立ち去る直前、
低い声で付け加える。
「赤くなるのは、俺の前だけにしろ」
——独占。
白井の顔が、
また一段階赤くなった。
「……っ」
言葉にならない。
爆豪は、何事もなかったように席へ戻る。
食堂には、
しばらく静寂が落ちたあと——
「……ちょっと、甘すぎない!?」
「朝から見せつけられたんだけど!!」
一気に、ざわめきが戻る。
白井は、
胸の奥の熱を持て余しながら、
小さく息を吐いた。
——気づいてしまった。
好意。
独占。
直球の言葉。
それを向けられて、
嫌じゃないと思う自分。
むしろ。
——嬉しい。
その事実が、
何よりも眩しかった。