第6章 揺れる日常、進む背中
特別訓練、三日目。
朝の体育館は、張りつめた静けさに包まれていた。
白井は、スタートラインに立つ。
隣には心操人使。
「……今日は、いけそうだな」
心操の声は落ち着いている。
「……うん」
白井は、深く息を吸った。
——焦らない。
——一人で背負わない。
昨日、爆豪から言われた言葉が、
胸の奥で静かに支えになっている。
「開始」
相澤の合図。
市街地想定の救助演習。
崩落、複数のダミー、時間制限。
「心操、左の誘導お願い」
「了解」
白井は、先に全体を見る。
動線。
二次崩落の可能性。
逃げ道。
——使うのは、必要な分だけ。
腕の一部を獣化。
爪と筋力を最小限に。
瓦礫を持ち上げる動作は、
昨日よりもずっと安定していた。
「今だ」
「……こちらへ」
心操の声で、ダミーが動く。
連携。
判断。
制御。
すべてが、噛み合う。
「……止め」
相澤の声。
一瞬の沈黙。
「……良い」
短い、だが確かな評価。
「白井」
視線が向く。
「判断が早くなった。
そして、引き際も覚えた」
「昨日の失敗が、
今日に繋がっている」
白井の胸が、
じんと熱くなる。
——できた。
——ちゃんと、前に進めてる。
少し離れた場所で、
爆豪が腕を組んで見ていた。
「……チッ」
小さく舌打ち。
でも、その口元は、
わずかに緩んでいた。