第1章 転入生 白井狼薇という少女
着替えを終え、ロッカーを閉める。
白井は、胸の奥に残った小さな違和感を、
そっと押し込めた。
――聞かれる日が、来る。
――そのたびに、どこまで話すかを選ばなきゃいけない。
廊下に出ると、遠くで男子の声が聞こえる。
その中に、荒い声が混じっていた。
「……余計なこと聞くなよ」
聞き覚えのある声。
爆豪勝己だ。
誰に向けた言葉かは、分からない。
けれど、
なぜか胸の奥が、少しだけ熱くなった。
白井狼薇はまだ知らない。
“悪気のない質問”が、
少しずつ彼女の過去に近づいていることを。
そして、
それを誰よりも先に“守ろうとする感情”が、
もう一人の中で形を持ち始めていることを。