第6章 揺れる日常、進む背中
休憩時間。
倉庫の影で、二人は水を飲む。
「仮免の特別訓練」
爆豪が、缶を持ったまま言う。
「今日の動き、使いどころ分かってきてる」
「……ありがとう」
「評価じゃねぇ」
ぶっきらぼうに続ける。
「困ったら、文化祭も訓練も、全部だ」
「俺に言え」
視線は合わない。
でも、逃げてもいない。
白井は、胸の奥が温かくなるのを感じた。
「……勝己」
名前を呼ぶ。
「……何だ」
「一緒にやれて、心強い」
爆豪は、一瞬だけ固まり、
それから短く答えた。
「当たり前だ」
それ以上、何も言わない。
⸻
作業終盤。
A組全体が集まり、確認に入る。
「安全チェック、確認完了ですわ!」
八百万が報告する。
「思ったより、けっこー安心感あるよな!」
切島が笑う。
白井は、
完成しかけたコースを見つめた。
——みんなで作った。
——一人じゃない。
隣には、爆豪がいる。
「……なあ」
爆豪が、低く言う。
「今日は、ここまでだ」
「明日も続き、ある」
それは、
“また並ぶ”という約束だった。
「……うん」
白井は、頷いた。
二人は、
並んで倉庫を後にする。
触れない。
でも、近い。
作業の中で育つものは、
言葉より確かだ。
文化祭は、
形になり始めている。
そして二人の距離も、
同じ速度で。