第6章 揺れる日常、進む背中
文化祭準備初日。
体育館裏の倉庫前は、資材と段ボールで溢れていた。
「安全マットはこっち!」
「動線テープ、足りてる?」
A組の声が、忙しなく飛び交う。
白井は、手にした図面を見下ろしながら、動線の最終確認をしていた。
来場者が迷わず、転ばず、怖くならない配置。
派手さより、安心。
「……そこ、少し狭ぇ」
低い声。
振り向くと、
爆豪が、マットを抱えたまま立っていた。
「ここ曲がる時、子ども詰まる」
「……確かに」
白井は、図面にペンを走らせる。
「じゃあ、ここを広げて——」
「俺が動かす」
言い切り。
次の瞬間、爆豪は無言でマットを移動させ始めた。
「……ありがとう」
「礼いらねぇ」
短く返す。
でも、
動きは丁寧だった。
⸻
作業は続く。
誘導ロープの位置。
サポート係の立ち位置。
緊急時の退避ルート。
二人は、必要なことだけを言葉にする。
「ここ、見通し悪い」
「じゃあ、立ち位置一つ前に」
「転倒時、ここに手」
「……了解」
息が合う、というより、
考え方が似ている。
「……狼薇」
不意に、爆豪が言う。
「この企画、無理、してねぇか」
作業を止めずに、
ぽつり。
白井は、少し考えてから答えた。
「……してない、、むしろ、楽しい。守ること、考えるの」
爆豪は、鼻で息を吐いた。
「だろうな」
それだけ。
——分かっている、という声だった。