第5章 まだ言葉にしない夏
でも、
重くはない。
轟は、
小さく頷いた。
「……分かってた。いつか、そう言われるってな。」
白井が、驚いて見る。
「誰かが、
お前の心を動かした」
一拍。
「それは、
俺じゃなかっただけだ。」
否定でも、
悔しさでもない。
「……正面からぶつかるような、そんなやつだ」
白井の脳裏に、
ぶっきらぼうな背中が浮かぶ。
「それで、いい」
轟は、そう言って微笑んだ。
「俺は、
伝えられてよかった」
「……ありがとう」
白井も、深く頭を下げる。
「無理は、すんなよ。俺はこれからも変わらねぇ。」
それは、
最後まで変わらない優しさ。
「おやすみ、白井」
「……おやすみ、轟」
轟は、背を向けて歩き出す。
恋は、
音もなく終わった。
でも、
後悔はない。
⸻
その夜。
寮のラウンジ。
ソファに座る白井の横に、
爆豪が腰を下ろす。
近い。
でも、触れない。
「……疲れたか」
「……少し」
「なら、今日は早く寝ろ」
それだけ言って、
立ち上がる。
去り際、
一言だけ残す。
「俺は、ここにいる。」
白井は、
その背中を見つめた。
胸の奥が、
静かに、でも確かに動く。
——変えられた。
——気づかないうちに。
恋は、
もう動き出している。
日常の中で、
誰の目にも。
そして、
一人の少女の心にも。