第5章 まだ言葉にしない夏
「……昨日の夜、心操と、話してたな」
探りじゃない。
確認。
白井は、少しだけ驚いた顔をしてから、頷いた。
「……うん」
「話したのか」
一瞬、間。
「……話した」
爆豪は、
何も聞かない。
——内容を知る資格は、
——今の自分にはない。
「……そっか」
短く、それだけ。
沈黙が落ちる。
でも、
嫌な沈黙じゃない。
「……なあ」
爆豪が、低く言う。
「今まで俺ぁ、、お前を、、狼薇を傷つけなかったか」
白井が、首を横に振る。
「……大丈夫」
「無理、してない」
「……それに」
少し、言いづらそうに。
「勝己が、ちゃんと距離を考えてくれてるの、何となく分かる」
爆豪は、目を見開いた。
「……分かるのかよ」
「……うん」
小さく、笑う。
「いつも直球だけど、押し付けてこない……それが、すごく安心する」
胸の奥が、
じんと熱くなる。
——評価じゃねぇ。
——信頼だ。
⸻
「……だからな」
爆豪は、拳を握る。
「今は、これでいい」
白井が、目を瞬かせる。
「お前が、
自分のことを整理してる間」
「俺は、
横にいる」
条件も、期限もつけない。
「奪わねぇし、
急がせねぇ」
「……ただ」
一拍。
「逃げもしねぇ」
白井は、
その言葉をゆっくり受け取る。
「……ありがとう」
短いけれど、
重みのある返事。
⸻
爆豪は、ここで話題を変えた。
「……腹減ったな。、、飯、一緒に行くか」
それは、
“特別”じゃない誘い。
でも。
「……うん」
白井は、自然に答えた。
二人は並んで歩き出す。
隣にいる。
触れない。
でも、離れない。
それが、
爆豪の選んだ距離。
——守るってのは、
——突っ込むことだけじゃねぇ。
胸の奥で、
その答えが静かに固まる。
この夏は、
まだ続く。
そして、
この関係も。