第5章 まだ言葉にしない夏
夏休みのとある日の午後。
寮の廊下は、昼の静けさに包まれていた。
爆豪は、
自室のドアに背を預け、腕を組んで立っていた。
——遅ぇ。
理由もなく、
そう思う。
白井が、
今どこで何をしているのか。
誰と話しているのか。
気にならないわけがない。
「……」
昨夜の言葉が、
胸の奥で反芻される。
『私を知って欲しいって、不思議な感情がある』
——あれは、
軽い言葉じゃなかった。
だからこそ。
——今、
——踏み込むのは違う。
⸻
白井が、
ラウンジの方から戻ってくるのが見えた。
表情は、
どこか穏やかだ。
「……おい」
爆豪は、自然に声をかけていた。
「……勝己」
名前で呼ばれる。
それだけで、
胸の奥がざわつく。
「……今、いいか」
「……うん」
二人は、爆豪の部屋で並んで座る。
距離は近い。
でも、
触れない。