• テキストサイズ

オオカミ少女は愛の夢を見る

第5章 まだ言葉にしない夏


少し離れた場所。

爆豪は、パンを噛みながら黙っていた。

——話題に出るの、早すぎだろ。

「……うるせぇ」
低く言う。

「用事があっただけだ」

「へぇ〜?」
上鳴が笑う。
「用事ねぇ」
爆豪は、視線を逸らした。

——否定、できねぇ。

用事じゃない。
でも、
それ以上の言葉も、
まだ使えない。



「……白井」

落ち着いた声。

轟が、白井の方を見る。

「無理は、してないか」

昨日の夜を知っている者の、
静かな確認。

「……大丈夫。ありがと。」

白井は、はっきり答えた。

「楽しかった」

その一言に、
場の空気が少し変わる。

「……そっか」

轟は、それ以上言わない。
ただ、
小さく頷いた。



「……白井」

今度は、
心操が声をかける。

「後で、課題の続きをやるか」

いつも通り。
変わらない距離。

「……うん」

白井は、微笑んだ。

そのやり取りを、
爆豪は横目で見る。

——変わってねぇ。

でも。

——昨日とは、違う。

白井の表情が、
少しだけ柔らかい。



朝食の時間は、
そのまま流れていく。

大騒ぎにはならない。
詮索も、深追いもない。

でも。

——何かが始まった。

それだけは、
全員が薄々感じていた。

白井は、マグカップを置き、
立ち上がる。

胸の奥に、
小さな熱が残っている。

それは、
まだ名前のない感情。

でも。

——悪くない。

こうして日常の中で、
確実に動き出していく。

/ 231ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp