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オオカミ少女は愛の夢を見る

第1章 転入生 白井狼薇という少女


実技内容は、市街地想定の模擬戦。
複数人での連携と判断力を見る訓練だ。

「白井、心操、芦戸。このチームで行け」
相澤の指示に、白井は一瞬だけ固まる。

心操人使と、
芦戸三奈。

問題はない。
問題は――別の場所にいる男だ。

「爆豪、轟。
反対側から制圧」

視線が、ぶつかる。

爆豪は、そう思い目が合うと、彼は笑っていなかった。
ただ、獲物を見る目をしている。

開始の合図が鳴り響く。

白井は、動きを抑えた。前に出ない。援護に徹する。

芦戸が前線に出て、
心操が声で誘導する。

――このままでいい。

そう思った瞬間。

「遅ぇ!!」
その声と同時に響く爆音。

爆豪が、強引に突破してきた。

連携も、想定ルートも無視。
一直線に――白井の方へ。

「……!」

反射的に後退する。避ける。守る。
それだけのはずだった。

だが、距離が近すぎる。

爆豪の殺気が、
彼女の中の“檻”を叩いた。

――まずい。
彼女の頭の奥で、何かが軋む。
指先が、熱を持つ。

「白井ちゃん!?」

芦戸の声が遠い。

次の瞬間。
爪が、白く伸びた。

一瞬。
ほんの一瞬だけ。

獣の輪郭が、
白井の中から獣の本性が漏れ出す。

爆豪が、思わず目を見開いた。

「――ッ!」

その反応で、狼薇は我に返り、すぐに手を引き、呼吸を整えた。

戻れ。
戻れ。

何度も息を整え、何事もなかったかのように、爪は元に戻った。

沈黙。

瓦礫の向こうで、
轟焦凍が、静かに目を細めている。

相澤の視線が、
誰よりも鋭く、白井を捉えた。

「……続行」

短い指示。

実技は再開されたが、空気は変わっていた。
爆豪は、白井から目を離さない。
恐れでも、嫌悪でもない。
――興奮だ。

「……なるほどな」

小さく、噛み殺すような声。

綺麗なだけじゃない。
距離を取るだけの女でもない。 内側に、何かいる。

それを引きずり出したのが、
自分だと分かってしまった。

「チッ……」

爆豪は歯を食いしばる。

気に食わない。
危なっかしい。
目が離せない。

最悪だ。

白井狼薇はまだ知らない。

爆豪勝己が、
初めて“正面からぶつかった相手”として、
彼女を強く意識し始めたことを。

そして、
抑え込んでいた個性が、
確かに――目撃されたことを。

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