第5章 まだ言葉にしない夏
寮に戻り、
それぞれの男子棟と女子棟前のエレベーター前で立ち止まる。
「……今日は、ありがとな」
爆豪が言う。
「……こちらこそ」
白井が答える。
短い会話。
でも、
確かに残る。
「……おやすみ」
「……おう」
扉が閉まる。
⸻
爆豪は、部屋に戻っても、
すぐに電気をつけなかった。
ベッドに腰を下ろし、
天井を見上げる。
——両親を、
——自分の個性で。
その言葉が、
何度も胸を刺す。
今までの態度。
距離の詰め方。
言葉の強さ。
「……クソ」
知らずに、
傷つけてたかもしれない。
でも。
——それでも、
——逃げなかった。
白井は、
ちゃんと向き合った。
それが、
どれだけの覚悟だったか。
「……本気で」
低く、呟く。
「大切にしねぇと」
気合でも、
宣言でもない。
悟りだった。
好きになるとか、
そういう言葉より前に。
——壊さない。
——急がせない。
——否定しない。
直球で、
でも、丁寧に。
「……言い続けるって、
言ったな」
自分に、言い聞かせる。
電気をつける。
部屋が明るくなっても、
胸の奥の熱は消えなかった。
この夏は、
まだ終わらない。
そして、
この想いも。
もう、
引き返さない。