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オオカミ少女は愛の夢を見る

第5章 まだ言葉にしない夏


「……なあ」

少し間を置いて、
また爆豪が切り出す。

「狼薇、お前恋愛とかしたことあんのか」

白井は、瞬きをした。
「……ない」
即答。

「誰かを、好きになったことも?」

「……ない」
迷いもない。

爆豪は、眉を寄せた。

「……嘘だろ」

「……嘘じゃない」

「じゃあなんで」

語尾が強くなる。

「俺が、こんだけ話しかけて、隣にいて、出かけて、平然としてんだよ」

白井は、言葉に詰まる。

——鈍感。
——分かっていない。

それは、責めじゃない。
理解できない、という戸惑い。

「……狼薇」
爆豪が、名前を呼ぶ。

「逃げんな」
「答えろ」

熱く燃えるような赤い瞳で、白井を捉えて逃がさない。
白井は、視線を落とした。

——ここまで、踏み込まれたのは初めてだ。逃げられない。
白井の中の獣の本能がそれを悟る。

「……私」
声が、少し震える。

「誰かを好きになるって、分からない。愛されるってどういう気持ちか……受け取ったことが、なかったから」

爆豪が、黙る。
白井は、ゆっくり言葉を続ける。

「4歳の時、私は自分の個性で、人を殺した」
一瞬、空気が止まる。

「……両親だったの。」
初めて口にする事実。

「施設に預けられて、大人からも、子供からも、距離を置かれて生きてきた。“愛される”って感情を、私は、自分から遠ざけてきた」
理由は、単純だった。

「……受け取る資格がないって、思ってた」
爆豪は、何も言わない。

でも、目は逸らさない。
「だから」
白井は、胸に手を当てる。
「誰からも大切に思われる資格なんて私にはない。」

沈黙。

でも、
拒絶はない。

沈黙が続いた。
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