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翼の約束

第2章 バックストーリー



ユキノ・ベリスタは、王都ミットラス近郊の裕福な商家の長女として生まれた。
父は壁内貿易で成功した商人、母はかつて憲兵団に所属していた元兵士という、珍しい家庭環境だった。

幼い頃から、ユキノは母の影響を強く受けていた。
母は憲兵団を退団した後も、立体機動装置を自宅の庭で手入れし、時折ユキノに基本を教えていた。
「壁の中で生きるだけじゃなく、壁の外の世界を知る強さも必要よ」と、母はいつも言っていた。
その言葉の意味は、当時のユキノにはよくわからなかった。

10歳の時、大きな転機が訪れる。
母が病で急逝したのだ。
最期の病床で、母はユキノに小さな青い宝石のイヤリングを手渡した。
「これは私の母から受け継いだもの。あなたが本当に守りたいものが見つかった時、力を貸してくれるわ」

それ以来、ユキノはそのイヤリングを常に身につけている。
母の形見であり、自分の中にある「外の世界への想い」を象徴するものだった。

父は娘を大切に育てたが、商家の娘として政略結婚の話が持ち上がるようになった。
ユキノはそれを嫌った。
壁の中で宝石を揺らしながら、誰かの妻として生きるだけの人生など、母の教えに反すると思った。

15歳の時、調査兵団の公開訓練を見学する機会があった。
そこで見たハンジ・ゾエの姿に、ユキノは衝撃を受けた。
巨人に対して、好奇心と情熱で立ち向かう女性。

「私も、あんな風に自由を追い求めたい」

その日から、ユキノは本格的に立体機動の訓練を始めた。
母が残した装置を徹底的に使い込んだ。
才能はすぐに開花した。
彼女の動きは、力任せではなく、計算され尽くした優雅さを持っていた。
ガス消費を最小限に抑え、刃の軌道を完璧に制御する――それは、母から教わった「生き抜くための美しさ」だった。
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