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翼の約束

第8章 壁外からの帰還



リヴァイは、医務室の扉の前で立ち尽くしていた。
夜遅く、廊下には誰もいない。
負傷兵の治療が一段落した時間――
ユキノが一人で片付けをしている頃だ。

手には、何も持っていない。
ただ、握りしめた拳だけ。

(……何をしに来た)

自分でも、わからない。

イザベルとファーランを失ってから、
リヴァイは誰とも言葉を交わしていない。
訓練も、食事も、機械的にこなすだけ。

刃を磨く時間が増えた。
血の臭いを、消すために。

でも、夜になると、
ユキノの顔が浮かぶ。

壁外で、腕を掴まれた感触。
「生きて帰りましょう」と言われた声。

あの時、ユキノの瞳に涙が溜まっていた。
それでも、離さなかった。

(お前は……泣いてた)

イザベルとファーランのために。
仲間のために。
そして、俺のために。

リヴァイは、ゆっくりと扉をノックした。

中から、かすかな物音。
そして、ユキノの声。

「……どうぞ」

扉を開けると、一人で薬草を整理していた。
疲れた顔。
目の下に、薄いクマ。

でも、リヴァイを見た瞬間、
わずかに目を丸くして、それから
――穏やかに微笑んだ。

「リヴァイさん……」

リヴァイは、無言で部屋に入った。
扉を閉め、壁に寄りかかる。

沈黙が、落ちる。

ユキノは、薬草を置いて、リヴァイの前に立った。
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