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翼の約束

第8章 壁外からの帰還


【リヴァイの視点】

リヴァイは兵舎の裏手に立ち、
壁に背中を預けていた。
月は出ていない。
ただ、闇だけが広がっている。
手には、欠けた刃を握ったまま。
拭いても拭いても、血の臭いが消えない。

(……帰ってきた)

壁の門をくぐった時、
物凄い吐き気に襲われた。
自分でも、信じられなかった。

イザベルとファーランが、いない。

あの二人が、もういない。

最後の瞬間が、頭の中で何度も繰り返される。

イザベルが笑いながら異常者の注意を引いて、
ファーランが冷静に撤退ルートを確保して、
そして――巨人の手が、二人の身体を掴んだ。

叫び声は、聞こえなかった。
ただ、血が飛び散った。

リヴァイは、馬を捨てて飛び込んだ。
刃を振り回し、周りの異常者を斬りまくった。
でも、遅かった。

二人の身体は、すでに――
原型を留めていなかった。

ユキノが、駆け寄ってきた。

「もう……無理です。生きて帰りましょう」

あの声が、耳に残っている。

震えていた。
涙をこらえていた。

でも、はっきりと言った。

リヴァイは、ユキノを睨んだ。
殺すような目で。

お前も、失いたくなかった。

イザベルとファーランを失ったのに、
お前まで失ったら――
俺は、もう何も残らない。

だから、ユキノの手を振り払わなかった。

馬に並んで、撤退した。
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