第8章 壁外からの帰還
【ハンジの視点】
ハンジ・ゾエは、壁の門をくぐった瞬間、馬から転げ落ちそうになった。
足がガクガク震えて、立っているのもやっとだ。
周りの兵士たちが疲労と絶望で顔を伏せている中、ハンジだけが、眼鏡を押し上げて、にやにや――いや、泣き笑いみたいな顔で辺りを見回していた。
(……帰ってきた……みんな、帰ってきたよ……)
エルヴィン班の生存率は、予想をはるかに上回っていた。
異常者の群れに囲まれた時、正直、もうダメかと思った。
信号弾が上がるたび、心臓が止まりそうだった。
でも――。
リヴァイが、暴れていた。
馬を捨て、立体機動だけで異常者の群れに飛び込み、うなじを次々と斬り落としていく姿は、
まるで悪魔だった。
いや、神様だった。
(あれは……人類の希望だよ)
ハンジは、遠くで馬を降りるリヴァイの背中を見つめた。
制服は血と泥にまみれ、刃は欠け、ガスもほとんど残っていないはずなのに、
背中はまっすぐで、誰よりも強く見えた。
イザベルちゃんは……。
ハンジの目が、熱くなった。