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翼の約束

第6章 壁外調査前夜


【女子寮・ユキノのベッド】

ユキノはベッドに横になりながら、母のイヤリングを指でなぞっていた。
医務室で準備した包帯や薬草の匂いが、まだ手に残っている。

(明日……壁の外へ)

心臓が、静かに、でも確実に速く鳴っている。

怖い。

巨人の姿を、ハンジさんの実験で何度も見てきた。
再生する肉体、蒸発する巨体、喰らう瞬間の残酷さ。

でも、それ以上に――
仲間たちが傷つく姿が、怖い。

リヴァイさんの刃が、
イザベルちゃんの笑顔が、
ファーランさんの冷静な瞳が、
失われるのが、怖い。

(私は……みんなを、守れるかな)

医官として。
立体機動で負傷者を回収し、
深夜に磨いた格闘で、自分だけでも生き延びて、
一人でも多くの命を繋ぐ。

馬舎での日々が、胸を熱くする。

イザベルちゃんの無邪気な笑い。
ファーランさんの穏やかな感謝。
そして、リヴァイさんの――
最後の最後に握り返してくれた手。

「あの人は……私を、どう思ってるんだろう」

無口で、苛立って、
でも、ちゃんと「悪くねぇ」と言ってくれた。

あの瞳の奥に、揺れるものを見たとき、
ユキノは決意した。

(リヴァイさん……あなたを守りたい)

最強の兵士だから、じゃない。
地下街の闇を背負い、
仲間を一人で守ろうとして、
心を凍らせてきた人だから。

ユキノはイヤリングを強く握った。

(お母さん……力を貸して)

明日、みんなが笑って帰ってこれるように。

その想いを、胸に抱いて、
ユキノは静かに目を閉じた。
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