第1章 出会い
翌朝、訓練場は再び霧に包まれていた。空はまだ薄暗く、冷たい風が木々の葉を揺らす中、調査兵団の兵士たちが集まり始めていた。噂が広がったのだろう、イザベルとファーランをはじめ、数人の新兵が遠巻きに様子を窺っている。
リヴァイはいつもの無表情で立体機動装置を装着し、ユキノを待っていた。彼の心には、昨日の苛立ちが残っていた。壁内の裕福な少女が、自分の技術に並ぶなど、許せない。
ユキノが現れた。医官見習いの軽装に装置を付け、穏やかな表情で近づいてくる。彼女の瞳には興奮の色が浮かんでいたが、リヴァイはそれを無視した。
「……遅ぇ」
リヴァイの声は低く、棘のあるものだった。ユキノは軽く頭を下げ、微笑んだ。
「すみません、準備に少し時間がかかりました。では、始めましょうか? ルールは?」
リヴァイは鼻で笑い、訓練場の高い木々を指差した。そこには立体機動の標的として使われる巨木が林立し、枝が複雑に絡み合っている。
「簡単だ。俺についてこい。ガス切れや着地ミスで落ちたら負けだ。お前みたいな温室育ちが、俺のペースに耐えられるか見ものだな。」
ユキノの表情が少し引き締まったが、すぐに頷いた。
「わかりました。負けませんよ、リヴァイさん。」
二人は同時にアンカーを射出して飛び上がった。リヴァイの動きは瞬時に加速し、まるで影のように巨木の間を縫う。ガスを最小限に抑えながらの高速旋回、枝を蹴っての急上昇――地下街で命を賭けて磨いた技術が、霧の中を切り裂く。
だが、ユキノはすぐに追いつき、並走した。彼女のフォームは洗練され、余計な動きが一切ない。リヴァイの視界に、彼女の銀色の髪がちらりと入る。
「ふん……まだついてこれんのか。」