第5章 近づく距離
それから毎朝、
リヴァイが少しずつ、少しずつ、力を抜いていくのを見て、
ユキノちゃんが決して急かさず、ただそばで見守ってるのを見て、
ハンジはもう、胸が熱くなりっぱなしだった。
(ユキノちゃん……ほんとにすごいよ)
優しくて、強くて、決して相手を追い詰めない。
リヴァイの氷みたいな心を、じわじわと溶かしていく。
そして今日――。
リヴァイが、ユキノちゃんの手を握り返した。
「悪くねぇ」って言った。
(あれはもう、告白に近いよ!! リヴァイ的には!!)
ハンジは屋根の上で両手を握りしめて、ぶるぶる震えた。
イザベルちゃんの抱きつきも、ファーランの素直な感謝も、全部素敵だったけど、 やっぱりリヴァイの変化が、一番胸にくる。
あの人が、誰かを認める瞬間を、
こんな近くで見られるなんて。
(調査兵団に来てよかった~! ほんとに生きててよかった~!!)
ハンジは空に向かって大きく伸びをした。
これで四人が揃った。
壁外調査で、どんな化学反応が起きるんだろう。
リヴァイの刃が最前線で暴れて、
ユキノちゃんが後方で命を繋いで、
イザベルちゃんが笑いながら駆け回って、
ファーランが全部を冷静に見極めて。
(……絶対、すごいことになるよ)
ハンジは眼鏡を直して、にやりと笑った。
まだ誰にも言わないけど、
こっそり観察は続ける。
リヴァイとユキノちゃんが、
いつかもっと近づく日を、
首を長くして待ってるから。
(ふふふ……次はどんな顔するのかな、リヴァイ)
ハンジは屋根からそっと降り、
誰にも気づかれないように馬舎を後にした。
胸の奥に、大きな期待と、ちょっとした悪戯心と、
そして、仲間たちへの深い愛情を抱えて。
朝の陽光が、ハンジの眼鏡をきらりと光らせた。
これからの日々が、
とんでもなく面白くなる予感しかしない。
ハンジ・ゾエは、心からそう思った。