第5章 近づく距離
ハンジ・ゾエは、馬舎の屋根が見える場所に寝転がって、いつものように眼鏡をずらして覗いていた。
朝の陽射しがまぶしくて、手で額を覆いながら、にやにやが止まらない。
(わぁぁぁぁぁ!! ついに!! ついにこの日が来たよ!!)
ユキノちゃんが言った。
「もう……私に教えることはありません」
その瞬間、ハンジは屋根の上で小さくガッツポーズをした。
危うく落ちそうになったけど、そんなのどうでもいい。
リヴァイが―― あの無口でツンツンで、
誰にも心を開かないリヴァイが――
ユキノちゃんの手を握って、
「……お前のおかげだ」って言ったんだよ!?
(聞いた聞いた聞いた!! ちゃんと聞いたよ!!)
ハンジは胸を押さえて、転げ回りそうになった。
最初はただの好奇心だった。
地下街の最強トリオと、ユキノちゃんの化学反応が見たくて、毎朝こっそり屋根に上がって観察してた。
イザベルちゃんが馬に乗って大はしゃぎするのを見ては「かわいい~!」って悶え、
ファーランくんが冷静に上達していくのを見ては「さすが策士!」って感心し、
そしてリヴァイが……。
リヴァイが、影から見てるだけの日々を見ては、
(あー、もうたまらない! 苛立ってる顔が最高にかわいい!!)って一人で興奮してた。
でも、だんだん変わっていったよね。
リヴァイが自分から「教えろ」って言った日、
ハンジは屋根の上で感涙した。