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翼の約束

第5章 近づく距離


同時に、救いのように感じる。

(あいつが言った……「自分でここまで来た」)

違う。

お前がいたからだ。

お前の声が、待ってくれたからだ。

お前の手が、支えてくれたからだ。

リヴァイは拳を強く握りしめた。

認めたくない。

感謝なんて、したくない。

だが、胸の奥で、
静かに、でも確実に、
何かが溶け始めている。

ユキノ・ベリスタの存在が、
自分の殻を、音もなく削っている。

(……明日も、行く)

もう教わることはないと言われたのに。

練習を見守ると言われたのに。

それでも、行く。

あいつのそばにいたい。
あの温かさに、触れていたい。

それが、自分を変えることになるとしても。

(俺は……まだ、変わりたくねぇ)

地下街のリヴァイを、殺したくない。

強さだけで生きてきた自分を、捨てたくない。

だが、同時に――
イザベルが笑う世界で、
ファーランが穏やかな顔をする世界で、
ユキノが微笑む世界で、
生きていきたい。

その矛盾が、胸を裂くように痛い。

リヴァイはゆっくりと目を開けた。

朝の空が、青く広がっている。

(ユキノ……お前は、俺をどうするつもりだ)

葛藤は、深くなる一方だ。

苛立ちと、羨望と、
認めたくない感謝と、
そして、ほんの少しだけ芽生えた――
あこがれ。

地下街の狼は、初めて、
自分の牙では切れないものを、
胸の奥に抱え込んでいた。

それは、痛い。

だが、同時に、
温かい。

リヴァイは静かに息を吐き、
訓練場を後にした。

明日も、馬舎へ。

ユキノのそばへ。

変わることを恐れながら、
それでも、一歩を踏み出すために。

その想いを、誰にも言わず、
リヴァイはただ、黙って歩き続けた。

胸の奥の嵐は、
まだ、収まる気配がない。

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