第5章 近づく距離
【ファーランの視点】
ファーランは少し離れた干草の山に腰掛け、静かに二人を見守っていた。
(……リヴァイが、教わってる)
策士の自分でも、これは予想外だった。
あの孤高のリヴァイが、壁育ちの医官見習いに頭を下げて馬術を学ぶ日が来るなんて。
地下街の頃、リヴァイは誰の指示も受けなかった。
俺の策だって、気に入らなければ無視。
強さだけで道を切り開いてきた男だ。
なのに今、
ユキノ・ベリスタの静かな声に耳を傾け、
手綱の握り方を修正し、
馬の反応を確かめながら、黙々と練習している。
(あいつ……本気だ)
ファーランは苦笑いを浮かべた。
自分もユキノに教わった時、すぐに気づいた。
彼女の教え方は、ただ優しいだけじゃない。
相手のペースを完璧に読み、決して無理強いせず、
でも確実に上達させる。
馬を扱うように、人を扱うのが上手い。
イザベルはすぐに懐いた。
自分も、数日で馬に慣れた。