第5章 近づく距離
でも今、ユキノお姉さんが「手綱は優しく」「力を抜いて」って言うと、兄貴は黙ってその通りにしてる。
(兄貴が……誰かに教わってる)
それが、すごく嬉しかった。
ユキノお姉さんは優しくて、怖がらせないで、ちゃんと待ってくれる。
私に馬術を教えてくれた時も、転びそうになったらすぐに支えてくれて、「大丈夫、次はもっと良くなるよ」って笑ってくれた。
あの優しさが、兄貴にも届いてる。
(兄貴も、少しずつ変わっていくのかな)
地下街じゃ考えられなかったこと。
笑顔が増えて、未来を楽しみにして、誰かに教わること。
イザベルは小さく拳を握った。
(私、嬉しいよ、リヴァイ兄貴。
壁外で一緒に走れる日が、ほんとに来るんだね)
兄貴が馬から降りて、ガストにご褒美のリンゴをあげてる姿を見て、
イザベルは思わず笑顔になった。
兄貴の口元が、ほんの少しだけ緩んでる。
誰も気づかないくらいの、でも私にはわかる変化。
(ユキノお姉さん、ありがとう。
兄貴を、こんな風に変えてくれて)