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翼の約束

第5章 近づく距離


ユキノの教え方は、決して急かさない。
リヴァイのペースに合わせて、褒めて、修正して、
少しずつ進めていく。

30分後――
リヴァイはすでに軽く速歩(軽い走り)までこなしていた。
他の新兵が数日かかることを、朝の1時間で。

ユキノが少し離れて、見守りながら言った。

「リヴァイさん……本当に、すごいです。
 馬がこんなに早く心を開くなんて、
 初めて見ました」

リヴァイは馬を止め、無言でユキノを見下ろした。

「……お前、教え方が上手いな」

それは、リヴァイなりの、最大の感謝だった。

ユキノは少し驚いた顔をして、それからにこりと笑った。

「ありがとうございます。でも、まだ始まったばかりですよ。壁外で一緒に走れる日まで、頑張りましょう」

その笑顔に、リヴァイは一瞬、目を逸らした。

胸の奥で、葛藤がまたざわつく。

(あいつの教え方は……優しすぎる)

力ではなく、信頼で。
急がず、褒めて、待って。

それが、自分にはできなかったことだ。

イザベルにも、ファーランにも。

だからこそ、二人があんなに変わった。

(……俺は、まだあいつのようにはなれねぇ)

だが、今日、初めて――
ユキノから教わることで、
少しだけ、その温かさに触れた気がした。

レッスンが終わり、リヴァイが馬から降りる。

ガストが名残惜しそうに鼻をすり寄せてきた。

ユキノがリンゴを差し出し、リヴァイに手渡した。

「ご褒美をあげてあげてください。ガスト、頑張りましたから」

リヴァイは無言でリンゴを受け取り、馬の口元に差し出した。

ガストが優しく食べる。

その瞬間、リヴァイの口元が、ほんのわずかに緩んだ。

ユキノはそれを見て、静かに微笑んだ。

朝のレッスンは、こうして終わった。

リヴァイは馬舎を出ながら、心の中で呟いた。

(明日も……来る)

葛藤は、まだ消えない。

だが、今日から、少しだけ――
ユキノ・ベリスタの存在が、
リヴァイの胸の奥に、確実に根を張り始めていた。

壁外への一歩が、
静かに、だが確実に近づいている。
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