第5章 近づく距離
イザベルとファーランが変わっていくのを、リヴァイは敏感に感じ取っている。
だからこそ、葛藤し、苛立ち、そして――
決心した。
ユキノから学ぶという決断は、
単なる馬術の習得ではない。
リヴァイが、初めて自分の世界の外に、一歩踏み出すことだ。
エルヴィンの青い瞳に、深い満足と期待が宿った。
(これで、地下街の三人は完全に
調査兵団の一部になる。
リヴァイの強さが、ユキノの優しさに触れ、
より大きな力へと昇華する)
彼は思う。
リヴァイが壁外調査で本領を発揮する日。
ユキノが後方で命を繋ぎ、イザベルとファーランがその橋渡しをする日。
その時、調査兵団は確実に変わる。
人類の希望は、確実に近づく。
ただ――。
エルヴィンは小さく息を吐いた。
リヴァイの決心は、喜ばしい。
同時に、過酷な代償を伴うことになるだろう。
壁外の真実は、優しさだけでは守れない。
強さだけでも、届かない。
(リヴァイ……お前がユキノから学んだものが、
いつかお前を苦しめる日が来るかもしれない)
それでも、エルヴィンは後悔しない。
この出会いを、仕組んだのは自分だ。
地下街からリヴァイたちを引き上げ、
ユキノと同じ場所に置いたのは、自分だ。
(それでもいい)
人類の未来のためなら。
自分の夢のためなら。
兵士たちの犠牲は、避けられない。
エルヴィンは静かに柱から離れ、廊下を歩き始めた。
背中はまっすぐで、表情は穏やか。
だが、心の奥では、冷徹な計算と、深い期待が交錯していた。
(リヴァイ、ユキノ、イザベル、ファーラン……
お前たちが揃った時、
私たちは初めて、本当の壁外へ踏み出せる)
まだ班長に過ぎないエルヴィン・スミスは、
誰にも見せない微笑を浮かべ、夜の闇へと消えていった。
彼の計画は、静かに、だが確実に動き始めていた。
リヴァイの決心が、その大きな歯車を回したことを、エルヴィンは誰よりも深く理解していた。