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翼の約束

第5章 近づく距離


それは、自分だけの力じゃない。
ユキノの存在が、確実に影響を与えている。

(俺一人じゃ……足りなかった)

その事実が、リヴァイの胸を鋭く抉る。

強さで守ってきたつもりだった。
だが、守るだけじゃ、仲間は“生きて”いなかったのかもしれない。

ユキノは、生きる意味を、喜びを、与えている。

(……クソが、クソが、クソが……!!)

リヴァイは額を壁に押しつけ、歯を食いしばった。

認めたくない。

あいつの優しさを。
あいつの強さを。
あいつの存在が、自分に欠けているものを、
はっきり見せつけてくることを。

(俺は……あいつを超えたい)

立体機動で、戦場で、すべてで。

だが、同時に――

(あいつみたいに……)

優しくなんて、なれない。
笑顔を増やすなんて、できない。

それが、自分の生き方だと思ってきた。

なのに、今、心が揺れている。

あいつのせいだ。

すべて、ユキノ・ベリスタのせいだ。

(……明日も、行く)

馬舎に。

イザベルを見に。
ファーランを見に。

そして――
あの、認めたくない温かさを、
もう一度、確かめに。

リヴァイは拳を強く握りしめ、月明かりに背を向けた。

葛藤は、胸の奥でますます激しく燃え上がる。

苛立ちと、羨望と、
自分の中の欠落への怒りと、
そして、ほんの少しだけ芽生えた――
あこがれに似た感情。

地下街の狼は、初めて、
自分の牙だけでは守りきれないものを、
痛いほど感じ始めていた。

ただ、それを認める日は、まだ来ない。

今はただ、
葛藤を闘志に変えて、
明日も馬舎へ足を向けるだけだ。

ユキノを、超えるために。
そして、自分自身と戦うために。
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