第4章 化学反応
エルヴィンは、二人が互いに刺激し合っていることに、深い満足を覚えていた。
リヴァイはユキノを見て、自分の育った環境との違いに苛立ち、さらなる高みを目指す。
ユキノはリヴァイを見て、戦場の過酷さを思い知り、自分の選択の脆さを自覚し、密かに補強する。
結果として、調査兵団全体のレベルが引き上がる。
(完璧なバランスだ)
エルヴィンは思う。
リヴァイが最前線で巨人を斬り開き、
ユキノがその後方で命を繋ぐ。
二人がいずれ背中を預け合う関係になれば、調査兵団の戦力は飛躍的に向上する。
ただし――。
エルヴィンの瞳に、一瞬だけ冷たい光が宿った。
ユキノの成長は歓迎だが、彼女が「戦う側」に完全に転じるようなことがあれば、医官としての価値が損なわれる可能性もある。
それは避けなければならない。
(ユキノ・ベリスタ。
お前はリヴァイを刺激する良いライバルだ。
だが、お前の本当の役割は、死んだ兵士を減らすことにある)
エルヴィンは静かに窓から視線を外した。
二人の未来を、冷徹に、しかし確かな期待を込めて見据えながら。
リヴァイは「人類最強の兵士」として。
ユキノは「命を繋ぐ要」として。
この二枚の駒が揃った時、
自分の夢――壁の外の真実への道が、確実に近づく。
エルヴィン・スミスは、そう信じて疑わなかった。