第4章 化学反応
〜ユキノについて(新たな発見)〜
一方、ユキノ・ベリスタ。
当初、エルヴィンは彼女を「有用な補助要員」と位置づけていた。
医官見習いとしての才能は抜群。
ハンジの研究を医学的に支え、戦場での生存率を確実に向上させる存在。
立体機動の腕も予想外に優れており、負傷兵の回収や後方支援で大きな役割を果たすだろう。
優秀な「駒」の一つに過ぎなかった。
だが、最近の観察で、エルヴィンは見直しを迫られている。
彼女はただの壁育ちのお嬢様ではない。
母の血を引く本物の兵士の素質を持っている。
医官に徹するという信念は強いが、それが「逃げ」ではなく「選択」であることもわかってきた。
そして――深夜の旧訓練場で、一人で格闘を磨いている姿を、エルヴィンはすでに把握している。
報告を受けたわけではない。
自ら夜回りをした際に、月明かりの下で汗を流す少女の姿を、遠くから目撃したのだ。
(……面白い)
エルヴィンは内心で呟いた。
ユキノは、自分の弱さを自覚している。
リヴァイの言葉に傷つき、それを埋めるために密かに努力している。
表向きは穏やかで優雅だが、内側には確かな炎がある。
彼女はリヴァイとは正反対のタイプだ。
リヴァイが「孤高の刃」なら、ユキノは「繋ぐ糸」。
一人で全てを切り裂くのではなく、仲間を支え、命を繋ぎ、全体を強くする。