第4章 化学反応
リヴァイが右から、ユキノが左から、同時に大型標的のうなじへ突入。
刃が同時に閃く。
標的の首が、綺麗に真っ二つに割れた。
着地した瞬間、二人はほぼ同時に地面に降り立った。
息はほとんど乱れていない。
周囲の兵士たちが呆然と見守る中、上官がタイムを告げた。
「リヴァイ・ユキノペア……圧倒的1位。記録更新だ」
イザベルが飛び跳ねて喜び、ハンジが拍手喝采を送る。
だが、リヴァイはユキノを振り返り、低く言った。
「……お前、格闘はどうした。医官だからって、地面に落ちたらどうする」
ユキノは少し息を整えながら、静かに答えた。
「落ちないように、飛ぶだけです。それが私のやり方ですから」
その言葉に、リヴァイの目がわずかに細められた。
(落ちないように……?)
甘い。
戦場は、そんな理想通りにはいかない。
だが、同時に――認めざるを得なかった。
今日の対決で、ユキノの立体機動は自分と完全に互角だった。
いや、一部の効率では上回っていたかもしれない。
リヴァイは背を向けながら、心の中で毒づいた。
(クソ……まだ、置き去りにできねぇ)
ユキノは遠ざかるリヴァイの背中を見ながら、小さく息を吐いた。
(リヴァイさん……本当に、すごい)
胸の奥で、静かな闘志が灯る。
二人のライバル関係は、今日の対決でさらに深みを増した。
上官が次の演習を告げる中、リヴァイは装置の刃を無言で拭い、
ユキノは母の形見のイヤリングにそっと触れた。
この対決は、まだ始まったばかり。
いつか本物の壁外で、二人が背中を預け合う日が来るまで――
静かな競争は、続いていく。