第4章 化学反応
入団から二週間が経ったある午後。
調査兵団の立体機動訓練場に、特別な演習が組まれた。
「ペア対抗・模擬巨人討伐戦」
複数の木製巨人標的が森の中に配置され、ペアで協力して最も効率的に「うなじ」を切り刻む時間を競う。
上官の説明が終わった瞬間、リヴァイの視線が鋭くユキノに向かった。
ユキノもまた、静かにリヴァイを見返していた。
これまで二人は一度も直接ペアを組んだことがない。
リヴァイはイザベルやファーランと、ユキノはハンジや他の医官見習いと組んでいた。
だが今日、上官が告げたペアリングは――。
「リヴァイとユキノ・ベリスタ。一緒に動け」
周囲がどよめいた。
イザベルが目を輝かせ、ファーランが苦笑いを浮かべ、ハンジが「わあお!!これは見ものだね!!」と大声で叫ぶ。
リヴァイは無言で装置をチェックしながら、低く呟いた。
「……邪魔すんなよ」
ユキノは穏やかに微笑み、装置のガス圧を確認しながら答えた。
「リヴァイさんこそ。頑張りましょうね」
その言葉に、リヴァイの眉がわずかに動いた。
(頑張りましょう、だと?)
スタートの合図が鳴る。
二人はほぼ同時に飛び立った。
リヴァイの動きは、いつものように獰猛で無駄がない。
木々を蹴り、鋭い角度で旋回し、標的のうなじに刃を叩き込む速度は、他のどのペアよりも速い。
だが――ユキノも、負けていなかった。
彼女の飛行は、リヴァイとは対照的だった。
力任せではなく、流れるように優雅で、ガスの噴射音すら最小限に抑えられている。
標的へのアプローチは計算され尽くしており、一度の旋回で二つの標的を同時に斬るような軌道を描く。
リヴァイが正面から突っ込むなら、ユキノは背後から滑り込む。
リヴァイが高速で斬りつけるなら、ユキノは低空で精密に切り刻む。
二人の動きは、まるで鏡のように補完し合っていた。
だが、リヴァイの心は静かに燃えていた。
(……あいつ、また俺と同じ高さで飛んでやがる)
標的が次々と倒れていく。
他のペアがまだ半分も終わっていない頃、二人はすでに最奥の大型標的(15m級)に到達していた。
ここで、初めて二人の軌道が交錯した。