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翼の約束

第3章 苛立ち


戦場の本当の恐ろしさを、
ユキノはまだ知らない。
立体機動が完璧だろうと、医官だろうと――
戦場では、いつ地面に落ちるかわからない。
巨人に捕まれれば、装置が壊れれば、ガスが切れれば、そこはただの肉塊だ。

格闘術を知らなければ、一瞬で終わる。
治療どころか、自分が治療される側――
いや、死体になるだけ。

(屋敷の庭で優雅に飛んで、母の形見を揺らして、医官ごっこか)

苛立ちが、再び胸の奥で黒い炎を灯す。

ハンジの言葉が、余計にそれを煽った。

(賢い選択?)

笑わせるな。

戦場で「割り切る」なんて、甘い幻想だ。
生き残る奴は、すべてを極める。
立体機動も、格闘も、殺し方も、生き延び方も。

ユキノが医官として後方にいるつもりなら、それでもいい。
だが、あの動きを見せた以上―― リヴァイの目には、もう「ただの医官」では映らない。

(お前が戦場に出るなら、半端じゃ死ぬぞ)

心の中で、低く毒づく。

それは、怒りでもあり、
どこかで、認めざるを得ない相手への、
歪んだ警告でもあった。

イザベルがまたハンジに何か聞いている。
リヴァイは視線を逸らし、拳を軽く握りしめた。

(次に壁外に出たら……見せてやるよ。
 お前の「賢い選択」が、どれだけ脆いかを)

訓練が再開される合図が鳴った。

リヴァイは無言で次の相手に向かう。
動きはいつもより、わずかに鋭さを増していた。

地下街の狼は、静かに獲物を――いや、ライバルを睨み続けている。

ユキノ・ベリスタが、自分の信念をどこまで貫けるか。それを、リヴァイは冷たく見据えていた。

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