第7章 地獄の食卓私が変えます!
私はそう語りながら、亡者たちに問いかけた。
「ねえ、みんな。覚えてる?最後に誰かのために料理した日のこと」
しばらく沈黙が続いた後、一人の亡者がぽつりと呟いた。
「……娘の誕生日に、オムライスを作った。ケチャップで“おめでとう”って書いたけど、卵が破れて、泣かれた」
私はその言葉に微笑みながら、冷蔵庫から卵とケチャップを取り出した。
「じゃあ、もう一度作ろうよ。今度は破れないように、丁寧に。罪も卵も、優しく包むのがコツだから」
亡者は戸惑いながらも、卵を手に取った。鍋の火が、少しだけ柔らかく灯る。
私は食材を並べながら、献立を再構成していく。亡者たちの記憶に寄り添いながら、“懐かしい味”を再現する試みが始まった。
焦げた鍋の代わりに、澄んだスープ。腐った肉の代わりに、香ばしく焼かれた魚。異臭の漂う厨房が、少しずつ温かな匂いに包まれていく。
アゼルはその様子を見つめながら、静かに呟いた。
「君の料理は、罪の味を記憶の味に変えていくんだな」
私は鍋をかき混ぜながら、笑った。
「そう。料理って、罪も思い出も、全部混ざってる。でも、整えれば、誰かの心を揺さぶりそれは『思い出』になるんだよ」
鍋の中で、スープが静かに煮立っていた。腐敗の匂いは消え、代わりに出汁の香りが厨房に広がる。亡者たちは、整えられた食材を前に、戸惑いながらも手を動かし始めていた。
一人の亡者が、焦げた鍋を見つめながらぽつりと呟いた。
「これは……父に最後に作った味噌汁だ。塩を間違えて、喧嘩になった。あれが最後だった」
私はその言葉にそっと耳を傾け、彼の記憶をたどるように材料を並べた。
「じゃあ、もう一度作ろう。今度は、ちゃんと味を整えて。誰かのために作るって、そういうことだよ」
彼は震える手で味噌を溶かし、火加減を見ながら具材を入れていく。私は隣で見守りながら、静かに言った。
「焦げた記憶も、塩辛い後悔も、全部混ざってる。でも、整えれば、それは『思い出』となって、料理した人、食べた人の心に残るモノになるんだよ。料理って、そういうものだから」
味噌汁が完成すると、彼は一口だけすくって、口に運んだ。次の瞬間、彼の目から涙がこぼれ落ちた。
「……あの日の味だ。父に、もう一度食べてもらいたかった」